ニンジンの代謝成分で大人も記憶力アップ!?

ニンジンは,オタネニンジンの根を湯通しして乾燥した生薬であり,滋養強壮剤として有名である.補中益気湯十全大補湯,人参養栄湯などの漢方処方に配剤されるほか,栄養ドリンクなどの健康食品にも広く利用されている.ニンジンには種々のサポニンが含まれるが,特にプロトパナキサジオール系サポニンに分類されるギンセノシドRb1およびRb2などは,体内の腸内細菌によってギンセノシドコンパウンドK(CK)に代謝され,薬理作用を示すことが明らかとなっている.CKは,糖尿病,炎症,がん,ならびに認知障害を含む加齢に伴う諸症状などを改善することが近年相次いで報告され,大変注目されている.本稿で紹介するOhらの研究では,CKがマウス海馬の細胞増殖および神経細胞への分化を促進させることが明らかになった.さらに,老齢マウスの神経新生に対する作用を評価したことで,CKがアルツハイマー病や加齢に伴う記憶障害に対し有益である可能性が示唆された.