米国内科医の安川孝介氏が、科学的根拠に基づいた効果的な勉強法について解説するものです。以下、要点をまとめます。
安川氏の自己紹介
- 高校時代は学年1位
- 慶應義塾大学医学部卒業時は学年8位
- 医学部6年生時に日本の医師国家試験とアメリカの医師国家試験に同時合格(アメリカの試験では当時上位1%以内の高得点)
- 自身は特別頭が良いわけでも記憶力が良いわけでもないが、勉強のコツに気づいた
効果が低いとされる勉強法
- 繰り返し読む(再読):ある程度の効果はあるが、それ以上の効果は上がりにくい。他の方法に比べると学習効果は低い。ダンロス教授らの報告書でも有用性は低いと評価されている。
- ハイライトすること:強調する内容を選ぶのが上手い人には効果があるかもしれないが、あまり効果的な学習方法とは考えられていない。ダンロス教授らの報告書でも有用性は低いと評価されている。
効果が高いとされる勉強法
- アクティブリコール(能動的想起、想起練習):勉強したこと、覚えたいことを能動的に思い出すこと(アウトプット)。記憶するためには思い出す作業が非常に重要。インプットだけでなくアウトプットが決定的に重要。思い出す作業は、すでに覚えたことを確認するためだけの作業だと勘違いしている人がいるが、そうではない。数々の研究から、思い出す作業こそが記憶を定着させる効果的な方法だと分かっている。
- 科学雑誌サイエンスに掲載された研究では、アクティブリコールをしたグループが最も効果が高かった。
- 医学生を対象とした研究でも、アクティブリコールをしたグループの方が正答率が高かった。
- ダンロス教授らの論文でも有用性が高いと評価されている。
- アウトプット方法:練習問題やクイズを解く以外にも、勉強したことをただ書き出す、暗記カードを使う、声に出す、誰かに教えるふりをするなど、色々な方法がある。電車の中で昨日学んだことをできるだけ思い出そうとすることも立派なアウトプット勉強。
- 安川氏がやっている方法:教科書のある章や段落を読み終えたら、教科書を見ないで覚えた内容、覚えたい内容を白い紙に書き出す。書きながら声に出して、さらに誰かに教えているふりをしながらアウトプットすると効果が高い。時間を置いてまたできるだけ思い出して書き出す。忘れていたらまた教科書を見直して知識を確認する。
- 感覚反復(間隔反復、分散学習、spaced repetition):学習内容をまとめて1回で勉強するよりも、間隔を開けて勉強する方が記憶に定着しやすい。人間の脳は忘れるようにできているが、間隔を開けて繰り返し学ぶことで忘却曲線が緩やかになると考えられている。
- 子供を対象とした研究では、同じ日にまとめて勉強した場合と2回に分けて同じ内容をやった場合では、トータルの勉強時間に違いはなかったにも関わらず、5週間後にテストしたら間隔を開けて勉強した子供の方が英単語を覚えていた。
- スペイン語の単語の学習に関する研究では、30日間隔で覚えたグループが最も効果が高かった。
- ダンロス教授らの論文でも有用性は高いと評価されている。
- 連続的再学習(アクティブリコールと感覚反復の組み合わせ、サクッリラーニング):最初に勉強する時、アクティブリコールを使って1回から3回思い出せるようにする。その後数日から1週間後(理想的な間隔はまだ分かっていない)に思い出す作業(アクティブリコール)を繰り返す。通常の勉強方法と比べた調査では、連続的再学習をしたグループの方が3日後と24日後の試験の点数がはるかに良かった。
覚えにくいものを覚える方法(記憶術)
- 覚えにくいものを覚えやすいイメージに変換する。
- 具体的なものや人に変換することがポイント。
- 例:ヒパピローマウイルスの遺伝子型(16、18、31、33、35)を、イチロー、パピコ、サ行のイメージに変換してストーリーを作る。コロキアル(colloquial、口語の、会話的な)という単語を、コロ助とキア(KIA、韓国の自動車メーカー)のイメージに変換する。
- 有名な記憶術:場所法(記憶の宮殿、ジャーニー法)などがあるが、普段の勉強にはあまり必要ない。
最後に
- アウトプットを常に意識すること。
- この動画を見終わった後、すぐに次の動画に行くのではなく、一旦停止してアクティブリコール(想起練習)を試してみることを推奨。
- 科学的に確立した勉強方法や記憶術は義務教育で教えてもいいぐらいの内容。