からあげに潜む健康リスク 「国産鶏肉」でも揚げ油、からあげ粉に注意

スーパーのお総菜、家飲みのおつまみ、子供のお弁当……家でつくるのはちょっとめんどうだけど、食卓に上るとやっぱりうれしい「鶏のからあげ」。ニチレイフーズが発表した調査によると、2020年のからあげ消費量は前年比167%を記録しており、コロナ禍で人気が加速している。だが、カラッと揚がった衣にも、ジューシーな肉にも、“鳥肌モノ”の危険が隠されているという。

 

 ブラジル産、タイ産鶏肉などは品質が疑問視されて欧米で輸入禁止になるなど、その健康リスクが指摘されている。一方で、「わが家ではいつも国産の鶏肉を買うから大丈夫」と、安心するのはまだ早い。輸入鶏肉は、気づかぬうちに食卓に上っている。

 スーパーの総菜や外食、冷凍食品、デリバリーのからあげに使われる鶏肉は、原産国が表示されない場合が少なくない。表示されていない場合は、輸入肉だとみた方がいい。

 揚げ油にも着目すべきだ。米アイオワ大学などの研究では、「フライドチキンや魚の揚げ物をよく食べる人は、それ以外の揚げ物を食べる人と比べて心血管疾患のリスクが高い」という結果が出た。危険性の高い鶏肉を排斥している“フライドチキン大国”アメリカでなぜ、こんな結果が出るのか。その理由は油にある。米ボストン在住の内科医、大西睦子さんが語る。

アメリカでは家で揚げ物をする人は少なく、店で売っているものを買って食べるのが一般的です。店舗で使われる油は、日本で流通しているものと大差ないコーン油。何度も繰り返し加熱して使用することで、リノール酸などの不飽和脂肪酸が減少し、人体にとって有害なトランス脂肪酸が増えます」

 トランス脂肪酸は、血液中の悪玉コレステロールを増やして、善玉コレステロールを減らす。その結果、血管をふさぐプラークを増やし、動脈硬化や心血管疾患を引き起こす。また、腸管組織を傷つけて下痢などの原因にもなる。

「よく火を通す必要がある鶏肉や白身魚は、長時間揚げる工程で、そのほかの揚げ物以上に油を吸収します。また、揚げる前に塩分の添加が多いことも原因の1つだと考えられます」(大西さん・以下同)

 一方で、スペインやギリシャなど、日常的にオリーブオイルを料理に多用する国では、心疾患や血管系疾患、さらにはがんで死亡する人が少ないことがわかっている。

「まだ検証の余地はありますが、質のいいオリーブオイルには、トランス脂肪酸がほとんどなく、オレイン酸などの不飽和脂肪酸が豊富です」

 実際に、米ハーバード大学の研究でも、摂取する油のトランス脂肪酸のうち2%を不飽和脂肪酸に置き換えると、心疾患のリスクが53%も減少することがわかっている。とはいえ、揚げ油に毎回オリーブオイルを使うのは難しい。せめて使い古したものではなく、新しいサラダ油などを使い、二度揚げも避けてほしい。
「からあげ粉」は小麦粉で充分

 では、出来合いのからあげだけを避ければ、100%安全なのか──陰の主役「からあげ粉」にも、疑念は潜んでいるかもしれない。

 市販のからあげ粉はさまざまあるが、原材料表示を見渡すと、「調味料(アミノ酸等)」や「チキンエキス」「乳化剤」などの名称が確認できる。このうち「調味料」とは、アミノ酸などからなる旨み成分のことを指す。2種類以上の食品添加物を合成してつくられていることを意味しているが、具体的にどの食品添加物を使用しているか表示があることは少ない。

「チキンエキス」という調味料は、鶏肉の旨み成分を抽出したもの。明記されていない限り、原材料の鶏肉がどの国で加工されたものなのか、細かい情報は知りようがない。

「乳化剤」は、水と油をなじませるために使用される添加物だ。大豆由来の「大豆レシチン」や、厚労省が「食品に添加する限りでは人体への悪影響はみられない」と発表した「グリセリン脂肪酸エステル」などの合成乳化剤も含まれるが、これも同様に一括表示が可能なため、どの国で加工されたどの物質が入っているのか、見分けることは困難なのだ。

 おいしくて、安心できるからあげを食べるなら、鶏肉、揚げ油、粉に至るまで、すべて国産で揃えることはマスト。衣は市販のからあげ粉を使わなくとも、小麦粉や片栗粉で充分だ。そして何より、新しいきれいな油を使い、揚げたてを食べるのが吉。からあげだけは、手抜きをすると身を亡ぼすかもしれない──。