テオブロミンの摂取が骨髄由来体性幹細胞の増殖および分化能に与える影響

テオブロミンはキサンチンのメチル誘導体の一種で,カカオ,茶やガラナなどに含まれている.テオブロミンの生理作用として,カフェインと同様に血管拡張作用や覚醒作用などが知られている.最近の研究で,テオブロミンは間葉系幹細胞(MSC)から骨芽細胞への分化を促進する可能性が報告された.そこで,本研究では,テオブロミンの摂取がマウスの骨密度と骨髄中のMSCおよび造血系幹細胞(HSC)の増殖能および分化能に与える影響を検討した.6週齢の雄性C57BL/6Jマウスを通常食,0.05%テオブロミン食の2群に分け,自由摂食条件下で4週間飼育した.飼育終了後,右後肢脛骨の骨密度をX線CTで測定した.また,後肢大腿骨および脛骨の骨髄液から採取したMSCの細胞増殖能をWST-1法で評価した.骨芽細胞への分化能は,アルカリフォスファターゼ(ALP)活性染色法を用いて評価した.HSCの破骨細胞への分化能は,tartrate-resistantacidphosphatase(TRAP)陽性細胞数で評価した.さらに,骨髄液中のテオブロミン濃度をLC-MS/MSによって測定した.テオブロミン食群の骨密度は通常食群と比較して皮質骨で有意に高値を示し,海綿骨では高値傾向(p=0.0602)であった.テオブロミン食群骨髄由来のMSCの増殖能および分化能は通常食群と比較していずれも1.3倍で有意に高値を示した.HSCの分化能は,テオブロミン食群で通常食群と比較して低値傾向(p=0.1055)であった.骨髄液のテオブロミンは,テオブロミン食群でのみ検出されたが,18.9±5.6pg/mLと低濃度だった.これらの結果から,継続的なテオブロミン摂取が間接的にMSCの増殖能と骨芽細胞への分化能を高め,一方でHSCの破骨細胞への分化能を抑えることにより,骨密度を増加させる可能性が示唆された.