「新型コロナをインフルのように扱うな」 WHO専門家が警鐘

世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス感染症特使を務めるデビッド・ナバロ博士は24日、新型コロナウイルス感染症をインフルエンザのようなものとして扱ってはならないと警鐘を鳴らした。

変異株「オミクロン株」の流行に際し、行動規制を解除して「ウィズコロナ」に転換する国が増えているが、そうした傾向にクギを刺した格好だ。

ナバロは英スカイニュースに、新型コロナウイルスは新しいウイルスであり、「予想外のことだらけで、非常にたちが悪く、相当狡猾な」もののように扱うべきだと語った。

 

イングランドでは今週から、マスク着用やワクチン接種証明(ワクチンパスポート)の提示義務を撤廃する。ボリス・ジョンソン英首相は「インフルエンザと付き合っているように、新型コロナとも付き合っていく必要がある」との考えを示している。

英国のほかスペインやアイルランド、日本などでも、新型コロナ対策の行動規制を解除したり、新型コロナをインフルエンザのような風土病として扱ったりする動きが出ている。

 

これに対しナバロは、人々が目にしていることやWHOへの報告から判断すると新型コロナウイルスは「依然として非常に危険なウイルス」だと強調。

新型コロナがインフルエンザのようなものになるといった楽観的な見通しを示している人たちは「わたしやWHOの同僚たちが知らないことでも知っているのだろうか」と疑問を呈し、ウイルスの性質が突然変わったかのような言い方をしている政府を批判した。

ナバロは、新型コロナはとくに「まだワクチンを接種していない人や、これまでこのウイルスにさらされたことのない人」にとって危険だと指摘。今後、新たな変異株が発生する可能性にも注意を促した。

 

 

ドナルド・トランプ米大統領やブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領といった一部の政治家や、フォックスニュースのコメンテーターらは、パンデミック(世界的大流行)の当初から新型コロナをインフルエンザになぞらえ、その深刻さを軽んじてきた。

だが、ともに呼吸器疾患で一部の症状は重なるとはいえ、新型コロナは概してインフルエンザよりも症状が重く、死者も多い。さらに言えば、インフルエンザ自体も世界全体で年に最大65万人の死者を出しており、あまく見るのは問題だ。20世紀にはインフルエンザのパンデミックが3回起きており、そのひとつでは推定で5000万人が死亡している。

 

米大統領の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチは、新型コロナが根絶されることはおそらくないとし、インフルエンザのように、より制御しやすい病気になることが望ましいと述べている。