雪への備えはどっちが良い?「スタッドレスタイヤ」vs「タイヤチェーン」長所と短所は?

冬になると、タイヤの冬支度も必要です。いまや冬用タイヤとして定着したスタッドレスタイヤを装着するか、それともタイヤチェーン装着で冬をしのぐか、それぞれどのようなユーザーに向いているのでしょうか。
第7世代へと進化したスタッドレスタイヤ

 本格的な冬を迎え、クルマの冬対策が必要な時期になりました。

 とくに「タイヤ」に関する対策が重要ですが、冬用タイヤとして認知されている「スタッドレスタイヤ」に履き替えるか、それとも「タイヤチェーン」を装着するか、悩ましいところです。

スタッドレスタイヤ

 気象庁の長期予報によると、2021年から2022年にかけての冬は、北日本や東日本は例年並み、西日本の太平洋側は晴れが多いかわりに日本海側では雨や雪が多い予想になっています。

 ただし、昨今の異常気象により、普段は滅多に雪が降らない地域でも突然の積雪になる可能性も否定できず、クルマを運転する際は雪への備えが必要です。

 現在のスタッドレスタイヤとタイヤチェーンはかなり進化しているといわれています。カー用品量販店のスタッフ Kさんに話を聞いてみました。

 冬用タイヤとして認知されているスタッドレスタイヤですが、「鋲がない(スタッドレス)」という意味です。

 かつて冬用タイヤとして使用されていた「スパイクタイヤ」は、アスファルトが鋲によって削られ、粉塵が環境面や健康面で悪影響を及ぼすことから禁止され、鋲がないタイヤが誕生したのがスタッドレスタイヤのはじまりといわれています。

スタッドレスタイヤが登場したのが1980年代中期からで、その後いくつかの世代を経て進化を続けてきました。

 現在は、2017年頃から販売されている第6世代が主力商品となり、コンパウンドはナノレベルにまで研究され、著しく進化したといわれています。また、サイズが拡充されて広い車種への装着が可能になっています」(カー用品販売店スタッフ Kさん)

 2021年は第7世代のはじまりといわれており、各メーカーは優れたアイス性能を誇る新商品を投入。耐摩耗性やロードノイズの低減、ウェット性能の向上など、通常のサマータイヤに近い乗り味も特徴だといいます。

「数年前に購入されたスタッドレスを引き続き使用する人もいると思います。

 たとえ第6世代で性能的には優れていても、スタッドレスタイヤは寒い気温でも柔軟性を保つように設計されている分、通常のサマータイヤと比べて劣化や摩耗、硬化しやすく、3シーズン程度が寿命といわれています。

 現在お持ちのスタッドレスタイヤが使用期限内かを装着前に確認することをお勧めします」(カー用品販売店スタッフ Kさん)

 使用状況などにもよりますが、スタッドレスタイヤの需要は3年程度といわれています。溝が減っていないからといって使い続ける人もいますが,硬化したタイヤは雪道を走行できたとしても、凍結路では性能が低下している可能性があり、とても危険です。

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 海外ブランドのスタッドレスタイヤも存在しますが、より日本市場を意識して独自の進化を遂げているといいます。

 さらに昨今のSUV人気を受けて、SUV専用のスタッドレスタイヤも登場しています。
タイヤチェーンは大きくわけて3種類ある

 スタッドレスタイヤが必要になるほど雪道を走らない人が、万が一の備えとして用意しておくと便利なのがタイヤチェーンです。

 現在では大きく3種類に分類されると、前出のカー用品販売店スタッフ Kさんはいいます。


タイヤチェーン

「もっとも手軽な雪対策であるタイヤチェーンは今シーズンも売れそうです。従来から販売している『非金属系』と『金属系』のほかに、現在は『布製』が加わったことで、用途や頻度に合わせて選びやすくなっています」

 ここ数年注目されている布製を含め、各タイプの特徴をカー用品販売店スタッフ Kさんに教えてもらいました。

●非金属系

 ウインタースポーツなどで雪道を何度も往復する機会があるなら非金属系がお勧めです。

 プラスチックやゴムでできており金属系と比べれば軽量なのが特徴です。また毎年改良が加えられ、装着しやすくなっています。

 一般的な舗装路でも騒音や振動は我慢できるレベルで、何度も買い直す必要がないので数シーズンは使えます。

 欠点はかさばることでしょう。また装着しやすくなったとはいえ、正しく装着するにはそれなりにコツがいります。

 それでも錆びる心配もないですし、チェーン規制でも有効です。タイヤサイズさえ変えなければ、スタッドレスタイヤ以上に長く使用できると思います

●金属系

 金属系のメリットは価格の安さです。また重量はありますが、収納時は意外にコンパクトに収まるのもポイントでしょう。

 トラックなどの配送業のクルマにも最近はスタッドレスタイヤの装着率が上がっていますが、凍結路に強い金属系は根強い人気があります。

 一般の人でも、高齢者などは使い慣れている金属系を選ぶ人もいます。

 ネックは走行時の騒音と振動が大きいことや、正しく装着するにはコツと多少の腕力が必要でことでしょう。また、舗装路などを長距離走るのは難しい部分もあります。

 この金属系は安価で丈夫なのが魅力ではありますが、装着時にホイールやボディを傷付ける恐れもあります。

●布製

 2018年に国土交通省がチェーン規制にも使用を認可したことで、布製が一気に普及しはじめました。

「スノーソックス」や「オートソック」という商品があり、タイヤに(靴下のように)履かせるように装着するため、女性や初心者でも取り付けやすいのが特徴です。

 また、布でできているので軽量かつコンパクトに折り畳めます。

 ただ、圧雪路や新雪には強いのですが、シャーベット状になった道ではスリップが起きやすい事例も報告されていることから、一時はメーカーオプション化されていたものの現在は除外されてきているようです。

 素材の性質上から耐久性は弱いのですが、年に数回しか使わないとか、万一の降雪への備え程度になら対応可能だと思います。

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 スタッドレスタイヤもタイヤチェーンも甲乙つけ難いのですが、予算を確保できるのであれば、やはりスタッドレスタイヤを履いておけば安心ではあります。

 一方で、雪がほとんど降らない地域しか走行しない人はタイヤチェーンや布製を備えておくのが良いかもしれません。

 ほかにも冬用タイヤ規制にも対応して、夏でも交換する必要のない「オールシーズンタイヤ」も最近はラインナップが増えています。ただし、凍結路ではスタッドレスタイヤほどの性能は期待できないので、注意が必要です。

 また、突然の大雪などで発令される「大雪特別警報」や「大雪に対する緊急発表」があった場合、スタッドレスタイヤを履いていても規制区間はチェーンを装着しないと走れません。

 そのようなケースに備え、タイヤチェーンも用意しておくと良いでしょう。