「仕事の効率が落ちたらココアを飲む」が正解?たった1杯で脳への酸素供給が向上する効果

今回は、ココアと脳機能の関係についてご紹介します。

 ココアの原料となるカカオの栽培は、メキシコ湾南岸に暮らしていたオルメック人と呼ばれる人々が最初に行ったと考えられています。大規模栽培が始まったのは紀元前600年頃、栽培方法がマヤ人に伝わった後のことで、熱帯地方のユカタン半島から中米にかけての地域でつくられたカカオが、行商人によって気温が低い北部のアステカ人にもたらされました。

 アステカ人は、カカオの実を炒って挽いたものを人間の血に見立てて、宗教儀式に用いました。そのような経緯から、カカオの実は非常に価値が高く、貨幣として流通もしていたといいます。

 カカオが世界的に知られるようになったのは、アステカ人が栽培していたカカオを16世紀初頭にコロンブスの率いる探検隊が発見し、その後、アステカ帝国を征服したコルテスがスペインに持ち帰ったことがきっかけとされています。

 ココアの名称はスペイン語のカカオから来ていますが、その語源はマヤ語およびアステカ語のカカワであると考えられます。私たちが飲用するココアのような、カカオ豆からつくった飲料をアステカ語ではカカフアトルと言っていましたが、これをもとにスペイン人によってつくられた言葉がチョコレートです。

 私たちは砂糖や脱脂粉乳が加えられておいしくされた調整ココアを飲んでいますが、アステカの神官などは、それらの含まれていないピュアココアを飲用していたと思われます。ピュアココアはとても苦いのですが、なぜそのようなものをあえて飲用していたのでしょうか。意外と古代アステカ人は、今回科学的に示されたようなココアの効能を経験的に知っていたのかもしれません。

ココア1杯で脳が酸素を取り込みやすい状態に
 英国・バーミンガム大学の研究者らによる、ココアの脳に対する作用の興味深い論文が注目を集めています。ココアを1杯飲むだけで、脳が酸素を取り込みやすい状態になるというのです。人間の脳は1200~1500グラムで体重に占める割合は2%程度に過ぎませんが、全身で消費される酸素のうち20%を消費しています。脳は情報処理だけでなく、全身の臓器の働きや運動能力まで、人間の持つ機能のほとんどの制御を司っていますので、脳に供給される酸素がわずかでも不足すると、その影響は甚大です。

 今回の報告によると、カカオには「フラバノール」と呼ばれる物質が豊富に含まれており、フラバノールには脳への酸素供給を向上させる作用があることが確認されたということです。

 フラバノールはココアのほか、リンゴ、ブドウ、茶、ベリー類などにも豊富に含まれている化学物質ですが、フラバノールはさまざまな化学物質の総称で、食品の種類によって含まれているフラバノールの化学構造には違いがあり、特にカカオに由来するフラバノールは血管機能の改善に効果があるとされています。その効果は絶大で、ココアを1杯摂取しただけでも効果が表れると以前からいわれていましたが、その具体的な効果についてはこれまで明らかになっていませんでした。